色で遠近感を表現する4つの要素
2017/01/04
僕たちは普段様々な色に囲まれて生活しています。
ここ10年ほどで、色の持つ効果というものが一般の人にも認知されてきたように感じます。その証拠に色に関する検定試験などというものもずいぶん増えてきました。
このように一般的になってきた色の分野ですが、絵を描く際にも当然重要な要素です。
今回は色による遠近感について考えてみます。
色の要素
まずは色を構成する要素について考えてみましょう。
一般的に色を構成する要素として、下記3項目があります。
パソコンのグラフィックソフトを使っている人ならわかりやすいかな。
色相
赤・青・黄色といった、いわゆる色味です。
学校の授業で色相環というのを習ったと思いますが、その色相です。
明度
これは色の明るさ、もしくは暗さを表します。
パソコンのグラフィックソフトで、いろんな色を塗って、そこから色情報を抜いてグレーにすると、明度のみで表された表示になります。
彩度
いわゆる鮮やかさのことです。
赤・青・黄色・緑などの色をパッと思い浮かべて下さい。それらの一番鮮やかな色が、彩度が高い状態です。
そしてそれに白や黒の絵の具を徐々に混ぜていくと、色が濁ってきますね。それが、彩度が低い状態となります。
鮮やかさが全く無い。つまり彩度0とは、「白」「黒」「灰色」の無彩色がそれにあたります。
私が絵を描く際、色に関しては上記3項目を意識して描いています。
初心者が絵具を使って絵を描く際(特に油絵)、大半はこれらの意識なしに、描くため、色がドロドロの何色とも言えない灰色になって、にっちもさっちも行かなくなっている人を良く見ます。
これら要素があるということを知ったうえで絵を描くと、色について分析的に考えることができるので、これまでと違った見かたや描き方ができるでしょう。
色の組み合わせで遠近感を出す4つの要素
さてそれでは、上記のことを踏まえて、色によって前後の遠近感を表現するための3つの要素を紹介しましょう。
1.寒色より暖色が前に出る
色の寒暖差によって前後関係が生まれます。
上の画像を見てください。
青地に赤の物は、赤い物体が上に載っているように。また、赤字に青は、青い穴が開いているように見えませんか。
2.暗いより明るい方が前に出る
これはすぐにイメージできると思います。
白が前に張り出して見え、黒が引いて見えます。
なので、上図では、黒地に白は、白が図になり、白地に黒は、黒が抜けて穴に見えます。
3.無彩色より有彩色の方が前に出る
無彩色(白、黒、灰色)と有彩色を並べた場合、有彩色の方がより前方に見えます。
これは見なくてもなんとなくわかるんじゃないかと思いますが、やはり有彩色の方が、強く前方に張り出して見えます。
4.彩度が低いより高い方が前に出る
これは無彩色と有彩色の話と関連するのですが、彩度が高いほうが前面に出てきて、彩度が低いほうが後ろに引いていきます。
デッサンにどう生かせるか?
デッサンは基本、白と黒の無彩色の表現です。
なので、一見すると上記の明暗による遠近表現しか使えないかと思うかと思います。
でも実は、それだけではないのです。デッサンで使える色彩による空間表現は下記2つです。
- 2.暗いより明るい方が前に出る
- 4.彩度が低いより高い方が前に出る
暗いより明るい方が前に出る
2の明暗についてはわかりますね。
デッサンと言えば、明と暗の表現ですので、原則として明るい箇所が前面に張り出してきます。
そういうこともあり、モチーフが逆光になる位置でのデッサンは難しいのです。
彩度が低いより高い方が前に出る
問題は4の彩度です。鉛筆で鮮やかさの操作はどうしたらよいでしょう。
鉛筆の場合、芯が固いほうが彩度が低く、柔らかい方が鮮やかです。(例えば「H」と「B」では、Hのほうが固いので彩度は低く、Bの方が柔らかいので彩度は高い)
また、鉛筆や木炭の場合、彩度の高い色でもガーゼやティッシュでこすると彩度が落ちます。
このように彩度の操作方法はいろいろありますので、試行錯誤してみましょう。
色と言えばこの作家!
色の研究に興味を持ったら、チェックしてもらいたいのは何といってもこの人。「モンドリアン」です。
この作家は、作品を見た通り、色と構図を徹底的に突き詰めた作品を製作しています。自分のアトリエにある、家具の配置にまでこだわっていたというからよっぽどです。今、デザインのグラフィックに使っても十分におしゃれというあたりは、美術の美術たり得るところがきっちり押さえられているためでしょう。
このように色で遠近感を表現するという考え方もあるんだよと言うことを紹介してみました。
記事で描いたように、色と言っても、デッサンでも使える考え方ですので、次に描く時は意識しながら描いてみるとよいでしょう。
ではまた次回!
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